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2007/01/06

ホワイトカラーエグゼンプションの本来の趣旨

正月ボケから少しだけ立ち直ってきました。

きょうはホワイトカラー エグゼンプションの気分。どんな気分だ。
イングリッシュではイグゼンプション、アメリカンはエグゼンプションと発音…だよね。

数日おくと、頭の中でぶわ~っと書きたいことが花火みたいに飛び散って、どこから手を付けていいやら、、、すべてが関連性を持つことなので。

まずここからか。
whitecollar exemptionとは
アメリカの労働時間制度において、一定の要件(職種・職務や賃金水準)を満たすホワイトカラー労働者を労働時間規制の適用除外(exempt)とする制度。

アメリカの公正労働基準法は法定労働時間を1週40時間と定めており、それを超えて労働者を使用する場合には、通常の1・5倍以上の割増賃金を支払うことを使用者に義務づけています。ただしコンピュータの関連専門職や外勤セールスマンなど特定の職種や職務で、一定の要件(俸給水準要件など)を満たしている労働者は規制から除外されており、週40時間を超えて働いても割増賃金はもらえません。業務の裁量性が高く、労働時間の長さと成果が必ずしも比例しないと見なされるからです。

雇用環境が急激に変化している日本においても、これまでの裁量労働制やフレックスタイム制などだけでは対応が不十分だとして、2004年3月、小泉内閣がホワイトカラーエグゼンプションの導入を決定しました。これを受けて2005年4月に厚生労働省の「今後の労働時間制度に関する研究会」が発足、2006年からは労働政策審議会で議論を深め、2007年をめどに労働基準法の改正案を国会に上程する予定です。

つまり労働市場改革が先んじているアメリカが採用している制度です。
日本では「賃金を不当に安く抑えられている労働者が、残業代を削られ、過労死するまで働かされる経営者側からの押しつけ制度」として認知されてしまっているようです。

私も現時点での導入には反対です。成果をあげようとすれば、労働時間度外視で働かざるを得ず、手取りは減るわ拘束時間は長くなるわで、過労死しろと言っているようなものです。

ホワイトカラーエグゼンプション導入の前提条件は、フレックスタイムが常態化する保証と個々人の業務の裁量性を担保しなければなりません。会社で足並みを揃えて横並びで仕事をすることが真面目な勤労者というすり込みのある日本では、まったく性格に合いません。

政府は、この制度の趣旨説明が足りません。竹中氏のような政策のスポークスマンはいないのでしょうか。安倍首相の説明はこの程度です。

残業代ゼロ 首相「少子化対策にも必要」

2007年01月05日22時01分
 安倍首相は5日、一定条件下で会社員の残業代をゼロにする「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入について「日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか」と述べ、労働時間短縮につながるとの見方を示した。さらに「(労働時間短縮の結果で増えることになる)家で過ごす時間は、例えば少子化(対策)にとっても必要。ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を見直していくべきだ」とも述べ、出生率増加にも役立つという考えを示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 首相は「家で家族そろって食卓を囲む時間はもっと必要ではないかと思う」と指摘。長く働くほど残業手当がもらえる仕組みを変えれば、労働者が働く時間を弾力的に決められ、結果として家で過ごす時間も増えると解釈しているようだ。

 ただ、連合などはサービス残業を追認するもので過労死が増えるなどとして導入に猛反対している。このため、夏の参院選をにらんで与党内でも慎重論が広がっている。

 しかし、首相は通常国会への法案提出については「経営者の立場、働く側の立場、どういう層を対象にするかについて、もう少し議論を進めていく必要がある」と述べるにとどめた。

効率よい仕事で生活の質を高め、余裕をもって家族サービスをし、夜の生活も大事にしろと。しかし、現段階では、日本の風土に馴染む制度ではないだろうということですね。つまり日本の労働市場改革が遅れているということに他ならないわけですが、頭の固い人達はフレックスタイムの運用方法が概念の外みたいで、どうしても一昔前の働き蜂と言われた日本の労働形態しか想像できない。欧米でよいものを採り入れちゃいけないのですかね。そういう人ほど「フランスでは」とか「ドイツでは」と、あちらをモデルケースにして比較するくせに(笑)。私は、労働組合のつお~いフランスの落ち目ぶりを学ぶ気にはなりませんけど。(決して労働組合が悪とは言いません)

労働市場改革において、オランダ革命の話をしましたが、もっとワークシェアリングを進め、効率よく時間と場所にこだわらずに仕事を進めるという方法は、過労に追い込まれるどころか、本来は生活の質を高めるための制度であるということです。

これをまた「アメリカの押しつけ」「内政干渉」「アメリカの言いなりの自民党は国賊」と口を極めて「アメリカ=悪」であることを必死に訴える方達がいるわけでありまして、年次改革要望書を持ち出すのです。

では、もう一度じっくり要望書の軸となる概要を見てみましょう。
日米間の規制改革および競争政策イニシアティブに関する日米両首脳への第5回報告書

たしかに時代が進むにつれて、徐々に日本の政策に反映されてきています。
「要望書」であって「命令書」ではありません。日本の実情に合わなければ採用しなければいいだけのことです。そしてこれは相互性を持つものであり、日米ですり合わせて、日本からの要望ももっと出して欲しいとアメリカが働きかけている内容なのですね。(アメリカが評価している)郵政民営化があらゆる改革に関連することを見れば、20年以上も前から市場の流動性に活路を見いだしていた小泉前首相は大したものだと思います。

日本が抱える閉塞状態から目をそらし、「余所の国から言われたくねえ!」と唾吐きかける評論家は一種の引きこもりじゃないですか。そんなことだから、ケインズ理論に依拠する時代錯誤の公共投資による雇用創出で労働分配率を高めるという常識を、いまだに打ち破れずにいるのです。国民の総資産がGDPの3倍という国も珍しい。経済を活性化させるためには、澱んだままの金融資産の新陳代謝と労働市場の質の向上が必要です。大前研一氏が指摘していたことですが、私もそのとおりだと思いました。

安倍首相が所信表明演説で「筋肉質の政府」と言って失笑を買っていましたが、「小さな政府」というのは誤解のある言い方で「簡素で効率の良い政府」という意味です。政府は、最近は意識的に言い直していることをお気づきでしょうか。いかに今まで風通しの悪い行政体質であったか。筋肉質になるためには、澱んでいるものを揺り動かして燃焼させなくっちゃ。
日本外交もそうだし、日本企業にしても、これからもっと国際関係の中でプレッシャーにさらされます。外資によるTOBも進むでしょう。その中で、無駄を削ぎ、芯の強い企業として発展していくためには、放漫経営を改めざるを得ず、体質強化しなければなりません。それは悪いことでしょうか。

ホワイトカラーエグゼンプションに戻ります。

厚生労働省の調査研究が参考になると思います。
諸外国のホワイトカラー労働者に係る労働時間規制の適用除外

<アメリカの労働市場との比較において、日本はまだ時期尚早であると考える理由>

4.  考慮すべき事情等
ア  アメリカにおける労働時間規制は、時間外労働に割増賃金支払義務を課すことにより、雇用を増大させることを主な目的とするものと位置付けられ、適用除外をどのような者に認めるかを考える場合に、割増賃金支払義務を課すことにより時間外労働が抑制され、雇用創出に役立つか否かが重要な視点になるように思われる。

イ  アメリカにおいては、適用除外制度の対象者数が多く、かつ、健康確保措置が制度上義務付けられていないにもかかわらず、過労死や過労自殺といった長時間労働の弊害は、少なくとも日本におけるような問題にはなっていない。
 アメリカにおけるホワイトカラー労働者は、労働時間は長いとしても、日本人に比べてよりメリハリのある働き方をしており、長時間労働の蓄積による過労を防止できるのではないかとの仮説が考えられる。この点を基礎付ける統計資料は入手し得なかったが、インタビューによれば、アメリカのホワイトカラー労働者はよく働いてはいるが、休暇はきちんと取っているとの指摘がみられた。
 より重要な背景であると思われるのが、労働市場の違いである。アメリカでのインタビューにおいて、日本における過労死や過労自殺をもたらすような働き方の例を紹介したところ、しばしばみられた反応は、そのような働き方を強いられると労働者は転職してしまい、使用者も人材確保のためにはそのような働き方を強制できないので、日本におけるような問題は起きないのではないかというものであった。ここでは、転職が容易な労働市場が労働者が過酷な長時間労働を強いられるような状況の発生を防止する一助となっていることがうかがわれる。

ウ  FLSAの下での適用除外制度は、適用除外に該当しない労働者を適用除外者として扱った場合には倍額賠償制度のもとで集団訴訟が提起されたり、政府から訴訟を起こされたりするおそれがあり、また、いわゆる訴訟社会であることがそれに拍車をかけることになる。
 こうした制度的背景のもとでは、適用除外制度の法的ルールに違反することのリスクは大きくなるので、使用者としては、ルールの遵守のために十分な注意を払わざるを得なくなると思われる。

テレビのドキュメンタリー番組などでご覧になった方も多いと思います。全般的な傾向として、アメリカのホワイトカラーは猛烈に働く、しかし、自己裁量でメリハリをつけて、労働時間以外は仕事を引きずらない、だからストレスをためたり過労死することはほとんどない。組織に縛られずマイペースで実績を出すことに集中する。性格の違いなのかなと思いました。
運用実態としては、1999年アメリカの賃金・俸給払い雇用者のうちエグゼンプトの占める比率は約21%だということです。

コンピュータプログラマーやシステムエンジニアといった専門職エグゼンプトは説明の必要はないでしょう。ただし業務遂行のためには相当の拘束時間が必要なので、報酬の面で、もっと大幅に引き上げられるべきだと思います。

<ドイツの特徴>

 イ  一般に、高度の資格を有し、協約の最高賃金を超える賃金を得ており、一般労働者とは異なり、その業務に従って自己の責任で労働時間を管理することが期待される。また、一般に、協約外職員の人事的措置について事業所委員会の関心は乏しい。

<フランスの対象労働者の状況・実態>

 雇用労働社会連帯省によると、労働者全体のうち約2 割が幹部職員であるが、幹部職員の賃金の平均額は月額4,770 ユーロ(2002 年)である。幹部職員の過重労働の問題は、フランスでも最近盛んに議論されている問題であり、企業の中には過重労働対策をとっている例もみられているようである。もっとも、フランスの幹部職員の過重労働の問題は、「過労死」に結びつく問題というより「ストレス」の問題として捉えられている。

こんなところでしょうかね。
ようやく日本もここまで議論できるようにはなってきましたが、日本の労働市場に根付かせるためには、まだまだ研究が必要なようです。ただし本来の趣旨とかけ離れた経営者と労働者のヒエラルキー意識で、反対のための反対を唱えられてしまうと、労働市場の改善を塞ぐことになりかねないので、やはり安倍政権の国民に対する説明や啓蒙が何より重要になってくると思います。

<追記>

参考エントリー 熱湯欲ゴーリキーのお部屋「いわゆる“残業代ゼロ制”」 1/10
現状分析と今後の日本労働市場のありかたを考察する上で、秀逸なエントリーです。

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