カテゴリー「農業政策」の2件の記事

2009年9月 5日 (土)

農林水産分野の補正予算1兆円のインチキ。民主党の農業政策

旧ブログで農業政策の方向性について一定の結論は書いたつもりだが、農協改革は聖域のままである。小沢氏は「農協の言うことは聞かなくていい」と豪語したが、ハードルは高い。

農協は金融業としての割合が大きくなっており、流通の自由化が進んで行く中で、農家の脱農協が進んでいるのは事実である。農協はいずれ農水省の中央集権政策から脱却していく必要がある。民主党政権になってどう変わっていくだろうか。



まず民主党政権が手を付けるのは「補正予算の組み替え」。特に各省庁積み上げ式で、使い切れない分は、複数年度にわたる“基金”としてへそくっておこうというインチキ補正予算が麻生内閣で組まれてしまった。景気対策には関係ない、既得権者の分捕り合戦がここでも繰り広げられた。

基金は46にものぼり、そのうち22が農林水産分野だった。竹中さんが特に農水省予算に怒っていたのだが、1兆円もの額の辻褄合わせだったのである。「まずは景気対策」と麻生首相が自信満々に言う補正の中身が、「財政拡大」ありきの“無駄遣い”オンパレードであったわけだ。3兆円にものぼる官の施設費予算などは、即刻子供手当にでも何にでも回せる。公共事業を当て込んでいたゼネコンには気の毒だが、中小土木はすでに事業転換を始めているところも多い。

参照:フォーサイト7月号「選挙向け『1兆円農業補正予算』の偽装を暴く」 一ノ口晴人氏
減反政策の見直しを訴えてきた石破農水相は、シンポジウムでこう言ったという。

全てに何でも補償するなら、日本の農業に未来はない。選挙に勝ってから考える、ではダメだ

残念ながら選挙には負けたし、石破氏の言い分は農水省・農協組織・自民党農林族(西川公也氏ら4人組)に粉砕された。西川氏はテレビ映像に「農林族」として何度も登場し、農協には覚えがめでたく旧態依然の農業政策を守るために活躍した。いわく減反政策には断固反対。さらに減反政策強化策を補正に盛り込んだ。



「正直者対策」(この名称は5/8付「自由民主」の中に出てくる)
正直に生産調整している農家には転作面積10アールアタリ最大1万5千円交付する。ところが、「転作奨励金」の実態は、形だけ麦や大豆の種をまいて作り捨てしてしまう偽装転作が蔓延。水田の面積に補助を与え、転作作物の収穫量はいっさい関係ないのである。んなばかな・・。こんな政策で自給率上げるって(。_゚)?

「耕作放棄地再生利用緊急対策交付金」
これは通常予算でもお馴染みの「土木事業」である。耕作放棄地をどう再生利用するかというビジョンなどありはしない。単なる草刈りと土をほじくり返して石を取り除く作業をする予算である。

「農地集積加速化事業」
もっともらしい効率化経営を謳っているようだが、その実態は、保有する農地を荒廃させてきた「偽装農家」に10アール当たり1万5千円を助成する予算である。しかも具体的な受給条件は調整中というのだから、いかにも予算割り当てありきで作ったしろものである。資料を見ても一般には内容はわからない。「なるほど、効率化を図る良い予算案だよね」という感想を持つだろう。これもいわゆる「霞ヶ関文学」か。



民主党は1兆円の「個別所得補償」を公約に掲げている。EUの所得補償に倣い、永続的な強い農家を作ると理念は立派なのだが、EUは売り上げに対する補償であって、あくまで収穫実績中心である。ところが、民主党案では「生産費保証」に近い。

販売価格が標準的な生産費を下回った場合に差額を補填する制度なので、生産の効率化に努力する必要がない。農協は高い器具を与え、農地集積して生産効率を高めようとしなくていい。現状維持のための所得補償では、農家に経営感覚など生まれるはずがない。経営と生産をあくまで分離するなら、国が価格統制し、補償もしてくれるので、国の下請け生産者ではないか。

専業農家が農業経営を続けるためのEU方式の所得補償であれば賛成である。天候によって左右されるリスクがある以上、一定額の補償は必要と考える。民主党の理念自体は良いと思う。

農地法改正による経営と生産の戦略的一体化、そして流通のさらなる自由化によって、補助頼みの零細農家は淘汰される。しかし、ほとんどが兼業農家なので、農家を続ける理由が公共事業による「農地転用」期待なら何をかいわんやである。将来、農地転用期待があるので、やる気のある人に農地を貸したくない現状がある。自分の農地に高速道路の橋脚が立つなら「待っててよかった」というわけだ。



民主党は「食料自給率の向上と農林漁業・農山漁村の再生を図っていく」と高らかに謳い、自民党農政を転換する決意を述べている。その中でWTOの自由化交渉、日米FTAを進めていくという。米など重要な品目の関税を引き下げ・撤廃は当面はしないと修正したが、自由化交渉は避けて通れないだろう。

カロリーベースの自給率の欺瞞に踊らされることなく、着実に輸入も受け入れ、輸出産業として育成していく政策を進めるべきと思う。

民主党政権は、補正予算を一から組み直したほうが早いかもしれない。しかし、麻生首相の解散を後押しするつもりで民主党は賛成しているわけだから、なんとも体裁が悪いが仕方ない。あまり期待できないような気がするけれど、約束だから頑張ってね。

◆日々是語草◆ 
自民党内の路線対立を明確にせよ

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2009年9月 4日 (金)

米トレーサビリティー制度。民主政権になっても農水省は焼け太りか

鳩山民主党+社民党+国民新党政権には、あまり期待していない。「大きな政府」に後退する懸念もある。

小沢幹事長就任が確定し、実権を握るのは小沢氏だろう。巷間言われる二重権力構造というより、剛腕小沢に集中するカネ・人材・権力を鳩山総理が友愛ムードで緩和すると見たほうがいいかもしれない。鳩山氏は毒消しの中和剤のようなものである。おそらく水面下で小沢氏は人事にも介入するだろう。

岡田氏は小沢氏を「一度裏切る人は二度裏切る」と寄稿論文で不信感をあらわにしていたし、仙石グループの今後の動きも気に掛かる。小沢幹事長は、アンチ小沢の中堅・若手の全面的なバックアップをするだろうか。何度も訪米して人脈を作っている前原氏を外相にできるかどうかが試金石になるような気がする。ついさっきも前原氏がNHK(BS)で日米外交について民主党の外交方針を語っていたが。

以前、前原氏が米国訪問中に拉致問題を切り捨てるようなことを言ったと叩かれていた。前後の文脈を読むと、前原氏は「拉致問題が邪魔」などとは言っていない。対北強硬策にしても融和策にしても、ここまでこじれると糸口をつかむのは非常に難しくなっている。前原氏はとにかく安倍政権以来切れている北とのパイプを構築したいと考えているようだ。「経済制裁」を叫んでいれば解決できるような時期は過ぎている。まずは再調査の再開を!



麻生政権下で駆け込みの天下りが続いているが、石破農水相の改革努力も虚しく、農水省も焼け太りしている。

コメのトレーサビリティ制度(10月スタート)など愚策中の愚策で、もっともらしい大義名分に国民はころっと騙された。農水省の検査お目こぼしのせいで汚染米事件が起こったのが第一の原因なのに、国内米を追跡するなど意味がない。膨大なコストがかかるだけで、その分人手がかかるのをいいことに官が焼け太っているのである。

「小泉の負の遺産」と左巻き連中はプロパガンダに忙しいが、麻生が1年も居座ったおかげで、官僚がやりたい放題。麻生の負の遺産が残ってしまった。

読売のこの記事はよくまとまっている。

農水省焼け太り?700人合理化・新業務1100人

事故米の不正転用事件の発覚から5日で1年を迎えるのを機に、農林水産省が打ち出した組織改編案が波紋を呼んでいる。

<ポイント抜粋>
・ 農水省は不祥事の舞台となった地方農政事務所を廃止して職員700人を合理化するとしながら、事故米事件の再発防止策などの名目で、ほぼ同数の人員が新たに必要だと主張している。

民主党幹部も食の安全や農家保護のために、「地方組織の大幅削減は問題が出る恐れがある」と発言しており、同省のスリム化は、さらに遠ざかる可能性が出ている。

 ◆現状維持◆

・ 「要するに『現状維持を目指す』ということ。看板の掛け替えだ」。地方の農政事務所で働く50歳代の職員は、今回の組織改編案をこう見る。

・700人程度の削減するとしながら、同時に65か所に「地域センター」を新設し、その下にはさらに「駐在」(分庁舎)も置く。ここで実施する米トレーサビリティー制度のためには約1100人が必要で、「他部門の合理化をしてやっと職員数の増減はプラスマイナスゼロになる」(同省幹部)という。

 ◆実効性は?◆

・事故米事件後、再発防止策として導入されることになった米トレーサビリティー制度。その対象は、精米だけでなく、酒、団子、せんべいなど米加工品を扱うすべての業者に及ぶ。飲食店でも、提供する米飯には原則、原産国表示が求められる。対象業者数は米穀卸から加工業者や小売店、飲食店まで全国160万業者に及び、担当職員からは早くも「全業者をチェックするのは難しい」との声が漏れる。

・全国米穀販売事業共済協同組合の安藤勲常務理事
農水省の失策なのに、業者に新たな規制を課し、省の権限を強化するのはおかしい」と批判。省内からも「組織を維持するために作られた仕事」との声も聞かれる。

 ◆第2の食糧事務所?◆

・同省は2003年7月、食糧庁廃止に伴い、その出先機関である全国47の食糧事務所も廃止した。ところが同時に、直前に起きたBSE(牛海綿状脳症)問題を理由に、食の安全を担うとして「消費・安全局」を新設。結局、食糧事務所に勤務していた約8000人の職員はほぼそのまま現在の農政事務所に異動させた。

→民主党も焼け太りに手を貸す可能性がある。

・マニフェストで農家への戸別所得補償制度を掲げる民主党の筒井信隆・ネクスト農相は、読売新聞の取材に、同制度のベースとなるデータを集めるには、今以上に統計部門を充実させる必要が生じる可能性もあるとの見方を示し、「この制度をやるためにどんな組織・人員が要るかゼロから検討する」と話す。

・猪瀬直樹・東京都副知事
「戸別所得補償を掲げる民主党が政権につくと、組織がさらに膨れあがる可能性がある。農水省は組織を維持するために仕事を作ってきた。不要な業務や人員の問題を放置してきたから、事故米やヤミ専従の問題につながった。地方でもできる仕事を自治体に移管することで、国家公務員を削減しなければ改革にならない」と話している。



加工品にまで取引相手、数量、産地などの記録を義務づけるのは、業者への負担ばかりが大きくなり、農水省の新しい仕事作りに利用されたと言われても仕方がない。汚染米はミニマムアクセス米から発生したのであって、改善点は名ばかりの立ち入り検査にあった。不正横流しを見て見ぬふりしていたのである。当然バックマージンもあったはずだ。

政官業癒着の構造は、民主党になっても断ち切れるとは思えない。

◆日々是語草◆
いつまで醜態をさらしているんだ。自民党に再生する力は残っているか

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