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2010年10月20日 (水)

デフレを放置する日本は徐々に衰弱死に向かう

<デフレとは何か>

2001年、内閣府はデフレーションの定義を「物価下落が2年以上継続している状態」とした。国際通貨基金(IMF)などの国際機関に倣い、国際的な基準に合わせたものである。
政府は、それ以前は「デフレ」を「(単に物価が下落することを指すのではなくて、)物価の下落を伴った景気の低迷をさす場合」と定義してきた。

デフレの定義の再整理については、当時の資料を見てもらえばよくわかる。

景気判断・政策分析ディスカッション・ペーパー(pdf) 岡本直樹

デフレの定義については、論者によって幅があり、議論がかみ合わないケースがあった」と文書で指摘されているように、その後9年経つが、誰もがいまなおデフレを景気低迷(不況)と一体のものとしてすり込まれているのではないか。池田信夫氏は、ブログではっきり「デフレとは不況」と述べていた。彼らが処方箋を正しく書けないのは当たり前で、まるでデフレ放置主義である。

日本の金融学の研究の遅れが招く混乱が、金融政策そのものへの不信を招いていると思う。金融政策を否定するエコノミストは、一日の長にある米国に学ぼうという姿勢もない。

悲しいことに、経済政策で最も重要な対策であるのに、識者達がこれほど意見を違える分野もない。

文書では、「緩やかなデフレ」が招く弊害なども指摘しながら、議論を進めるよう結論づけている。非常に重要な段落である。(下線は管理人編集)

(デフレに直面する我が国経済)
7.デフレの経済的コストとして考えられるものは、大きく分けて、1)名目利子率の非負制約による経済変動の不安定化、2)名目賃金の下方硬直性により生じる失業率の高まり、3)金融仲介機能の低下を通じたマクロ経済への悪影響 等がある。デフレとインフレの政策対応を考えると、デフレに対処する政策の方がより困難であるため、インフレ率が非常に低い段階で、デフレを未然に防ぐ政策運営を行うことが重要ではないかと考えられる。
8.デフレを是正するために政府及び中央銀行がとりうる政策としては、いろいろな政策が考えられるが、いずれにしろ、インフレに対する議論に比べ、デフレに対する議論は、理論的にも実証的にも十分行われてきたとは言い難い。したがって、デフレに対する対策については、その採用の是非について賛否両論があるが、我が国の現状を鑑みると、政策の実施のタイミングや優先順位について慎重に考える必要があるものの、あらゆる政策の実施を前提に議論を進めることがより望ましいものと考える。
(以 上)
平成13 年3 月

2001年から何も議論が進まず、デフレが放置されたまま、さらに雇用不安を生んでいる。インフレ率と雇用率の相関関係を表すグラフはフィリップ曲線と呼ぶ。(別の要素を組み込んだ定式もある)

週刊現代連載のドクターZ(どこから見ても高橋洋一氏(^_^;)は、「オークンの法則」を紹介している。経済学では失業率と実質成長率の間に相関関係があり、国ごとにそれぞれ安定した相関関係がある。日本の場合は失業率を1%下げるには、成長率が3%高くなる必要がある。「人口減少すると成長できない」なんていうのはウソっぱちである。なんとなくそうかな?と騙されている人のなんと多いことか。

長期にわたるデフレは一国の経済に悪影響を与える。その克服のために中央銀行は努力するのが義務であり、0%維持を物価安定目標にしているような日銀は、民間の経済活動の大きな重石になってしまっている。今回の包括的緩和は、1000円必要な人に100円あげて「人助けした」と言っているようなものである。

<処方箋は何か>

リフレ派をインチキ・でたらめ・素人と罵るデフレ放置派の論説は、すでに聞くに値しない。

つい先ほどお粗末な論評を読んだばかりで、ツイッターに書いた。
齊藤誠 低生産性・高コスト構造を自覚せよ|デフレ日本‥ http://bit.ly/bGzIF1 →タイトルを見ただけで「駄目の典型」と思ったら予想通り。日本の学者って・・。為替レートを購買力平価で換算すると日本は悲惨だと認めているじゃないか。なぜそうなのか。書き切れない略

デフレ放置派の学者は、マイナス成長とデフレが実質金利の上昇をもたらし、円高圧力になることを無視し、今の円高水準はたいしたことはないと言いたいらしい。バカなことに雇用流動性を高めるために「正社員の解雇規制の緩和」が処方箋と主張する。円高・雇用悪化のデフレ下で、正社員まで路頭に迷わせてどうする。流動したくても野に放たれておしまい。

まず成長率を上げなければ雇用のパイは広がらないし、職業訓練などの育成プログラム、セーフティネット、企業と労働者の仲介システムの合理化など、解雇規制緩和の前にやるべきことはたくさんある。解雇をしやすくすることは賛成だが、まるで不況の解決策として提示することに「あなたは本当に学者?」と言いたくなる。

また産業転換が必要なのはそのとおりだが、転換するには資金がいる。成長産業のサービス分野進出のためには、ある程度の景気の下支えがなければ消費が促されず、育つことができない。解雇規制緩和も産業転換もデフレの解決策ではなく、デフレ克服しなければ達成されないものなのである。彼らは手段と目標を取り違えている。

そうしたらすぐ後に高橋洋一氏も反論してくれていた。ラッキ~

以下浜氏への批判だけど、さっきの齊藤氏への反論にもなってる RT @YoichiTakahashi: 1ドル80円かつデフレで長期均衡とか、1ドル50円かつ超デフレでも長期均衡とか、いう人の事実認識はどこからきているのか。多くの経済論戦は言葉の違いや前提となる事実認識の違いからきている

<デフレ放置派の学者が勘違いしていること>

1,カネはすでにジャブジャブ。
2,需要が足りない。
3,人口減少などの人口構造の変化

3については、人口(生産年齢)減少している国との比較を見ても、他国は経済成長しているので理由にならない。日本だけがデフレ。OECD諸国の最近10年間の平均名目成長率5.6%。日本はゼロ%で最下位。4%目標は決して難しくない。

1はもっともカネを必要とする世代にカネが回っていないことから流動はおきない。負債を引いたネットでは日本人の金融資産は1000兆円ほど。潜在的な消費力は高いが、将来不安などで死蔵される。量的緩和してインフレ基調に戻し、失業率も改善されて初めて消費マインドが高まる。

第一、国際的な銀行への規制強化によって、銀行は夏頃から再び貸し渋りが起きている。国債運用でしのいでいる銀行が若い起業家にカネを貸すわけもなく、新しい産業の芽は出てこない。日銀が市中から国債を買い上げ、その準備金を銀行に回し、政府が後押ししてどんどん貸し出す道筋をつけないといけない。そうすれば通貨の供給量が増えて円安誘導できる。

2については、大きな誤解があると思う。
需要が足りないのではなく、需要はあるのにカネがないからモノが買えない。ゆえに数値的には「需要<供給」になっているだけ。デフレとはお金よりモノが多い状態→一般物価の下落。お金があれば消費意欲が高まり、内需が改善、通貨の価値が低くなり、円安に。

つまり「カネはジャブジャブだから量的緩和は必要ない」という池尾氏や池田氏らの主張が、いかに政策として間違っているかが理解できると思う。流動させるには、生産年齢層への着火剤と追加のカネが絶対必要なのである。

<ワルラスの法則>

量的緩和が有効なことは、貨幣数量理論からも明らか。
貨幣とは、財、資産と並ぶ市場のプレイヤーである。カネも取引されるモノと考えるとわかりやすい。ワルラスの法則は、世界中で認知されている法則である。

ワルラスの法則について 飯田泰之

ワルラス法則とは、「すべての市場の超過需要の和はゼロになる」こと。

市場と資産市場において、ともに超過供給(需要が足りない)にあるならば、それは貨幣市場において超過需要がある(貨幣供給が足りない)ことと同値になる。

すなわち物価下落とは、慢性的な貨幣不足から引き起こされていることを認めない限り、デフレ脱却の対策と具体的な処方箋は出てこない。

日本経済は、徐々に体力を失って、瀕死に陥ろうとしている。それなのに栄養失調の怖さに気づかぬうちに「円高は極楽~」と、とぼけたことを識者が言って私達を思考停止に陥らせている。

やるべきことを、やるべき時にやらない、10年も放置する、これこそが日本の病ではないだろうか。

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