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2009年12月15日 (火)

日本経済の成長戦略はこれだ(4)「社会保障個人勘定」について

小泉構造改革の「官から民へ」に伴う政策の中心的課題は、労働市場改革とセイフティネットの充実だった。この改革が進まなかったので、社会福祉制度が現在の弱体化した経済に追いつかず、すべて小泉改革のせいにされてしまったのである。

の続き。

高橋洋一氏が「恐慌は日本の大チャンス」の中で、小泉政権下でやろうとしていた改革について詳しく書いている。
ビル・エモット氏も、労働市場改革については、より弾力性に富んだ単一の労働法規が必要としている。(同一労働、同一賃金) 必ずしも非正規雇用を良しとしてはいない。非正規雇用を拡大する施策は、企業からの訓練を受けずに未熟な労働者を増やすだけであり、人的資本が蓄積されない。長期的に日本の知識サービス産業を衰退させるとエモット氏は懸念している。

まず高橋氏は、「セイフティネットの充実がなければ、安心して派遣を選択することができない」と言う。初めに派遣を進めたのは厚労省だったのであり、その厚労省に6度も潰された政策が「社会保障個人勘定」の導入であった。

以下、本の内容にそって説明する。

年金不信の払拭のために、トータルでの給付・負担が明確になるように「社会保障個人勘定」を立案した。安倍政権下で年金不信が表面化したが、小泉時代にすでに手を打とうとしていたのである。ところが、当時の坂口力厚労相が「損得勘定を助長する」と反対した。竹中氏のブレーンだった高橋氏は諦めず、名称を変えてしつこく提言したのだが、ついに日の目を見なかった。

政府が2011年度から実施を予定している「社会保障カード」は、「社会保障番号」の導入も検討されているが、当初の構想とはかなり違う。竹中氏・高橋氏が提言したのは、社会保障と税の統合化という世界的な流れをくんだものだったという。そのルーツは、フリードマンが提唱した「負の所得税」にある。

<負の所得税>

フリードマンは新自由主義で社会保障には関心がないと思われているが、誤解である。
フリードマンが提唱した負の所得税とは、所得税と公的扶助制度を組み合わせ、課税前所得が課税最低限を下回る者に対しては、その差額の一定割合だけ給付を行うというものである。弊害は、所得ゼロの者でもかなりの給付金が受けられるので、逆差別を生むことになる。

アメリカが導入したのは、「給付付き税額控除制度」である。
低所得者層による労働供給を促進するとともに、低所得層の社会保障税の負担軽減を目的に、勤労所得税額控除を導入した。

この制度のすぐれている点は、職に就くことを税額控除の必要条件としており、最も所得の低い層では、所得が増加するほど控除額=給付金が増えるが、所得が一定水準を超えると給付金が徐々に減少する仕組みである。ただし給付金と所得を合計した手取額は増加するようになっている。さらに1997年、子どもの人数に応じた税額控除として「児童税額控除」も導入された。

勤労所得税額控除のメリットは、減税と給付金を組み合わせることによって、労働供給を抑制するという「もらい得」をなくし、労働意欲を高めるように制度設計されていることにある。働かないほうが給付がたくさんもらえると働く意欲がなくなってしまう、これを「貧困の罠」と呼ぶ。

舛添厚労相の下で、生活保護世帯が勤労母子家庭が得る所得より給付が多いという問題が取りざたされ、生活保護を受けずに勤労する世帯所得に合わせて生活保護の給付を引き下げようという政策が出された。そもそも勤労低所得者への保護が薄すぎるのである。小泉政権では、これを負の所得税で埋めようとしていたわけだ。これを妨害したのは厚労省だった。

<導入していれば年金問題も軽傷ですんだ>

韓国では、給付付き税額控除の導入にあたり、インフラを強化した。個人口座があると税額控除還付事務が格段に容易になる。(行革→効率の良い小さな政府)

国民の安心にもつながる。いちいち社保庁が膨大な経費を使って通知を出さなくても、掛け金と将来の給付が一目でわかるようになる。さらに医療保険や介護保険を一つの勘定にまとめて、個人にマッチした社会保障メニューを組むことも可能になる。社会保障の「お好みメニュー」である。

社会保険料の徴収や年金の給付も税務当局に一元化されれば、社保庁はとっくになくなっていたはずである。社会保障個人勘定を導入すれば、成長するITとインフラ強化によって、役所の縦割り行政の打破とスリム化が実現する。

評判の悪い後期高齢者医療制度への不満も解消できる。たとえば家族勘定をつくり、年金の天引きではなく、現役世代で給与収入がある長男が代わりに支払うという制度にも道が開ける。

小泉政権では、増大する社会保障費への対応として、そこまで制度設計の対策が練られていたのである。

麻生政権でも自民党の改革派は社会保障個人勘定の勉強を続けていたが、すべて霞が関頼みの麻生首相が一顧だにすることはなかった。

<子ども手当の是非>

子どもへの投資という観点から、イギリスが2005年に創設したチャイルド・トラスト・ファンドが参考になる。貯蓄推進計画の一つで、生まれた子どもすべてに政府が専用口座を開設し、親の所得に応じて最低250ポンドを口座開設時と7歳の誕生日に補助金として振り込み、親が追加拠出と運用を行うものである。これは非課税で、子どもが18歳になるまで資金が引き出せないルールとなっている。子どもへの教育投資、自立支援としてすぐれた制度であると思う。

民主党の子ども手当は目的がはっきりせず、少子化対策にはなりそうもない。親の裁量に任せるので、親のカネになってしまう可能性が大きい。少子化対策には保育施設を増やしたり、自民党が提唱する“現物支給”、たとえば現金のかわりに保育券を渡すといったほうが効果的だろう。出産補助金でもいい。

<アングラマネーも一網打尽>

個人の支出も社会保障番号で税務当局が一元管理する制度にすれば、さらなるメリットとして、およそ25兆円とも言われるアングラマネーを捕捉することが可能になる。方法は、銀行カードやクレジットカードなど、おカネの出し入れに関連するものは、すべて国民ひとりひとりに割り振った番号で登録しなければ作れないルールにする。支出だけでもガラス張りにすれば、所得はごまかせなくなる。

<社会的公正の確保>

・財産権の保障
「最低限の生活保障」として、中央政府は真の弱者を所得基準と資産基準によって明確に定義し、公正な行政の前提として所得調査・資産調査を行う。このためIT社会のインフラである国民総背番号制度(社会保障番号制を活用)を早期に導入する。その上で、国は所得再分配機能を担う。総背番号制度を「プライバシーの侵害」等と言って嫌う勢力は、日本国民としてやましさのある者達だけである。

・市場競争の確保
市場犯罪は国益を侵す重大犯罪であるという位置付けをし、市場のルールに違反した者に対する罰則を強化する。司法の面からも、市場規制全体について、「ルール違反はやり得」をなくすために高額の課徴金を課す。

・州政府の役割(道州制を導入)
社会づくりを担当。「振興・誇り・夢」を担う。

・市政府の役割
人づくりを担当する。市は行政の最小単位として、シビルミニマムの確保に責任を持ち、校区ごとのコミュニティの活性化に努める。

このように社会保障の整備について、高橋氏はさまざまな案を出したのだが、ことごとく厚労省に潰されたのであった。構造改革をやったというにはほど遠かったのが現実である。社会福祉に関しては何も進められなかったので、後の政権に後を託したが、尻すぼみになってしまった。改革が不完全なので、さまざまな問題が出ているというのが高橋氏の結論である。

「強い経済」「セーフティネットの充実」のために、構造改革のスピードを上げるべきである。しかし、「アンチ小泉改革」で政権交代をした鳩山政権にそれができるとは思わない。

菅国家戦略相では、埋蔵金を活用することも難しいだろう。あの政権では、チマチマと事業予算の上前をはねるくらいしかできないということだ。

◇日々是語草◇
オレ様の言うことをきかない官僚は許さん!てことですか、小沢さん。
「天皇を政治利用していると批判する者こそ政治利用している」ってどんな理屈ですか。中国共産党のために政治利用しているのはあんただ!!売国奴!!

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