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2009/06/26

竹中平蔵氏「『財政至上主義』の危うさ」。骨太2009への評価

竹中平蔵氏は「日本では壮大な"社会主義化"の実験が進んでいる」と言う。

つまり1940年体制を維持したまま肥大化した政府を温存し、経済危機に名を借りた保護の拡大は、不採算部門を非効率なまま残す結果となり、適正な企業合併も阻害するだろう。政府依存体質は、景気が上向いてきても変わることはない。

霞ヶ関が先取り予算として積み上げた財政出動の効果はあるだろう。数字も上向くに違いない。しかし、力強い成長戦略は見えてこないのである。そもそも発展する産業は、政府の援助など必要ない。今、産業構造の転換こそ求められるのに、日本はさらに巨大な政府に向かいつつあるのではないか。

基本計画2009(骨太2009)について、かつて骨太方針を牽引した竹中氏が論評しているので紹介しておく。

ポイントは、与謝野氏が主導した計画は「増税への依存」が顕著であり、その先に見える日本経済の姿は「低福祉・高負担」の社会であり、「重税・低成長」の経済だということである。

社会保障費2200億円削減は、党の反対によって了承されなかった。自民党は、もはや膨大な浪費を見直そうともしないのである。

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「財政至上主義」の危うさ
http://netplus.nikkei.co.jp/forum/academy/t_70/e_1960.php

◇竹中平蔵(日本経済研究センター特別顧問、慶大教授、元総務相)

 15兆円規模の追加経済対策が決まり、財政健全化に対する関心が高まっている。言うまでもなく、経済の活性化と財政の健全化は両立させる必要があり、イタリア・レッチェで週末に開いた主要8カ国(G8)財務相会合でも、政策を危機対応から元に戻す「出口戦略」の議論が始まった。

 経済情勢には一服感が出つつあるが、赤字が拡大した財政の健全化は大問題だ。財政赤字が主要国で最も大きい日本で、財政健全化はとりわけ深刻な課題となる。

骨太方針の基本姿勢は消費増税
 そうした中、政府の経済財政諮問会議は経済財政運営の基本方針となる「骨太方針2009」の素案のほか、財政健全化に向けたシナリオと試算を提示した。政府の基本姿勢は以下の3点に集約できる。

(1)これまで10年代初頭としてきた基礎的財政収支の黒字化目標年次を約10年先送りする

(2)債務残高の国内総生産(GDP)比を安定的に引き下げる

(3)目標達成には消費税率を7%引き上げ12%とする必要がある

 骨太方針で財政健全化の新目標を設定する必要はあるが、今回の内容からは徹底した「財政至上主義」がうかがえる。「経済と財政の両立」ではなく、「経済より財政」との思想が見え隠れするのだ。
 
 まず、基礎的財政収支の黒字化に10年を要するという姿勢に批判もあるだろう。しかし、あえてこの点には言及しない。時期よりも健全化のシナリオそのものの問題を指摘したいからだ。

約束ない歳出抑制
 今回のシナリオの最大の特色は財政・社会保障制度などの改革による歳出抑制について、積極的なコミットメント(約束)が見られない点だ。成長力を高めて税収を増やすという意図も強くは感じられない。一方で、消費税率の引き上げについては数字を挙げて明確な方向を示している。

 そもそも財政の健全化には(1)歳出削減(2)成長による税収増(3)最後の手段としての増税--という3つの要因が必要だ。しかし、今のシナリオは増税への大きな依存である。これを「将来世代に責任を持つ」という勇ましい言葉で包んで提示している。

 かつての骨太方針では、少なくとも基礎的財政収支の黒字化は「歳出削減」と「成長による増収」で可能だとみていた。そして、将来のさらなる社会保障負担や分権化のために消費増税を考えるというシナリオを想定していた。

見えてきた「重税・低成長」の日本
 だが今回は歳出削減や経済成長を強調せず、増税への依存、しかも基礎的財政収支の黒字化の段階での消費税率引き上げを示唆している。その先に見える日本経済の姿は「低福祉・高負担」の社会であり、「重税・低成長」の経済である。

 やや細かくなるが、今回の骨太方針には財政至上主義を感じる技術的な部分がある。例えば、先の補正予算で生じた一時的な財政拡大については、消費税試算の外に置いている。つまり現実には消費税率引き上げ幅は7%以上になることを示している。さらに基礎的財政収支よりも、債務残高のGDP比引き下げに大きなウエートを置いている。

 そもそも基礎的収支の黒字化が重要なのは、名目金利と名目成長率が同じ場合、言い方を変えれば、経済運営が正常な場合に、債務残高のGDP比を低下させるからである。

増税は最後の手段
 しかし、基礎的収支に関係なく単に債務残高のGDP比率を下げるということは、経済が正常ではないような状態であっても、とにかく財政は健全化するというメッセージにほかならない。経済と財政の両立ではなく、まさしく財政至上主義である。そうなれば経済の悪化は厳しいものになるし、結局財政健全化もできなくなってしまう。

 財政拡大の後始末は、しっかりとしなければならない。しかし、これを増税に依存するのではなく、歳出削減、成長による増収、最後の手段としての増税、という正しい手段で進めなければならない。

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